夜のコンビニはロマン

散文

 深夜〇時をまわり、「なんだか夜だから家にいるっていうのもあんまりにも縛られているな」と思うとき、そして息苦しく思うとき、私はスウェットのまま夜のコンビニに向かう。

コンビニでなくてもただ散歩をすれば良いのかもしれないのだけれど、夜に出歩くとなるとどうしてもコンビニに行きたくなる。ここはもう論理ではない。感覚の問題だと思う。


冬の夜は黒い画用紙の上に置かれたクリスタルみたいに暗く、とても暗く、それでいて透き通るように透明で尖っているように思える。

私はそんな空気に触れて、輝く遠い星たちを見ると、ゆっくりこの夜に浸りたいような気分になって、冬をもっと理解したくなり、どこかあたたかさが欲しくなる。

そしてゆっくりとコンビニを目指し、店のあかりを見つけて店内に入ると客は一人もいなくてレジにも一人しか立っていない。

この静かなコンビニがとても好き。なんだか誰もいない早朝の教室のように思える。

今だけは、この時間だけは、人と人が織りなすループのような社会は動いていないんだ。

とても懐かしく、あたたかな感じがする。明け方の星のようなか弱い自我は、ここにいる限り崩されることはない。

私は嬉々としてホットゆずレモンを買って店を出る。

刺すような夜に心地の良い支配感と明らかに鋭くなる感性を抱えて、右手には史上最高のあたたかさ。

星を眺めて、ため息を一つ。

そして歩き出す頃には、「そろそろ帰っても良いか」と思えてくるのだ。

夜のコンビニはロマンのネオン。

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