米津玄師「サンタマリア」に自作のショートストーリー添えてみた

ショートストーリー

導入

 米津玄師さんのデビュー曲のこの曲にストーリーをつけてみました!

 そして、こちらはまったくの私的見解であり、何か公的なものに基づく見解ではありませんので、その点ご理解いただきますようお願いいたします。

 では、ストーリーをお楽しみください( ´ ▽ ` )/

ストーリー

 僕は迷っていた。死んでしまおうか、死んでしまわぬ方が良いか。もう疲れてしまったのだ。税金や家賃は僕が引っ越しをすることすら許してはくれないし、職場の人間は僕のことなどコンピュータ魔人としか思っていない。コンピューター関連のことを質問するだけして、用が済んだらどこかに行ってしまうというわけだ。何もかもが僕の価値と、人生を束縛して離してくれない。僕はまずどのように一生を終えてしまうか考えていたのであるが、気がついたらまず死のうか死ぬまいかの議論を僕の中ですることになっていた。詰まるところ、僕は死ぬことに対して万全ではなかったのである。

 僕の中には身体と精神がはっきりと両極に位置し引っ張りあって僕のバランスを保っていた。しかしそこに、いわゆる「生命エネルギー」が不足したのだ。そのエネルギー、生命の火のようなものが欠落してしまったがために、ただ単に心身にかかる負担が大きくなってしまったのだ。

 特に音をあげたのは肉体のほうだ。精神の方は、自らろうそくに火を灯し、それでエネルギーを得ようとしている。つまりそのエネルギーで思考したり、時に思考しなかったり、そういう調整をしているということである。しかし肉体はそれを諦めた。恋人とともにこの街を出たい。僕の価値はコンピューターの技術だけではない。本当はそんなものではなくて夢だってあった。しかし諦めたのだ。そこに使う時間と金のコストがない。そのコストを稼ぐために仕事をしていたにも関わらず、恋人が借金をつくった。僕は僕の夢のために貯めた金をそこに使うしかなかった。挙句彼女は姿を消した。全くひどい話だ。僕はこれからもコンピューター魔人として生きていかなくてはならない。そのようなレッテルを貼られることは僕に対する妨害にしかならない。そういう思考に吸い取られて自分の体を動かしたいと思わなくなった。つまりあらゆる言動が憚られるようになったということである。

 精神は肉体に言った。

「私は君とくっつきたいのよ。身体くん。」

「僕だってそうさ。でもどうして僕は、君とくっつかないと何もしたくなくなるんだろう。」

 身体はそう言って笑った。

「どうしてって決まっているわ。そんな状態で勝手に動いてしまったらあなたは支離滅裂なことを言うし、タコのような踊りを踊ってしまうもの。だからあなたは私と一緒でなくちゃいけないのよ。私も私で、あなたと一緒でないと、頭の中で妄想するだけの、狂った人になってしまうわ。」

「僕は君の言うことを聞こうとは思えない。」

 そう言うと精神は「ばかねえ」と笑った。そして、熱い心があれば良いのよ、と呟いた。

「熱い心が我々の生命力になるわ。私が構想した理想をあなたが叶えてみてくれる?」

 僕はふと、サボテンを思い出した。太陽の下の、綺麗な緑色の植物。そして水と一緒にため込んだ夢を思うと、肉体は突然涙を流した。悲しみの、熱い心が精神に繋がり、悲しみを紡いで僕の瞳を潤ませたのだ。

 やっと自分が統一感を持ったような気がした。

 精神と肉体は、結びつけずとも、そばにいることにした。

 僕は陽だまりの中を歩き続ける。しかしそこに僕を決定してしまう要素は含まない。もちろん生死の選択もである。すべて僕が決めることだ。当たり前のことではあるけれど。

 わずかな窓の隙間から、優しく淡い橙色の光が差し込んでいた。

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