「ダンス・ダンス・ダンス」Tシャツを見て気がついた表紙の意味。

村上春樹

 このブログの運営を手伝ってくれているS氏という影武者がいます。(もちろん記事の執筆やイラスト描きは全て私が行なっています)

彼が今日家で、「ダンス・ダンス・ダンス」Tシャツを着ていました。後ろから彼を見ていて、背中にある表紙の絵を見ていると、色々なことが思い浮かんだのでここに記しておこうと思うのです。

深読みしすぎているかもしれませんし、あるいは読者の方がもう考え尽くしたようなことを述べているかもしれませんが、とにかく私的な解釈だと思って読んでみてください。

まずこのTシャツの構造がどのようになっているかということを考える必要があります。

背面には「ダンス・ダンス・ダンス」の表紙のえが描かれていて、前の部分の左胸のポケットに刺繍が施されている、というものです。

まずは本の表紙。Tシャツ裏面の右側が(上)左側が(下)のイラストになっていますね。

本を読んだ方なら一目瞭然であると思うのですが、当然真ん中の男性と思われる人物が「僕」その影となっているのが「キキ」でしょう。

つまりこの部屋には僕とキキ、この二人しかいないということ、それからここが窓の外の椰子の木と思われる絵を見るに南国、つまりハワイであることいすが置かれていることからここが白骨が置かれていたハワイの部屋なのではないかと思われます。

この部屋の絵はアングル的に全体が見えないようになっているのもそう言える一つの根拠ですね。物語の核とも言える白骨のことは流石にここでは描かず、一部だけを描いているというわけですね。

さて、(上)の方の絵をよく見てみます。

眺めていると、こちらの絵にはいくつか不自然な色合いが認められるのです。

例えばいす。(下)の茶色と比べると明らかにおかしな色合いをしています。窓の外や壁の色を見るに夜なのかとも想定できますが、夜だとしてピンク色に塗るかと言われるとこれはクエスチョンマークです。

窓の外も夜ということだけでなく不思議な時空なのだということを表したいのではないかと思われるような奇妙な紫色です。明らかにおかしな夜だと思われるわけです。

おかしな夜……白骨の置かれたハワイの一室「死の部屋」……キキ……

おそらくハワイでキキを追いかけてでもの部屋に入ったその時のことが描かれたのが(上)の方なのではないかと思いました。つまり本に書かれていた事実そのままということです。

そして(下)の絵を見てみます。窓といすをそれぞれ見ると、どちらも健全な色合いをしています。窓は明るい青、椅子は正常な茶色。おかしなところはありません。

おかしなところがない白骨の部屋。つまりここは、全てが繋がり、一周し終わった「僕」の場所なのだと思います。実際に全てが整った後に僕がこの部屋を訪れるシーンはないのでおそらく単にこの絵は何もかもが集結したことの象徴と取れるのではないでしょうか。

しかもその後正常な状態の「死の部屋」に「僕」がいることは何ら不思議ではありません。実際(下)の最後のあたりで僕がキキの夢を見た時、キキは「ここはあなたの部屋なのよ」と言いました。だから「僕」はいつでもこの部屋とのつながりがあるのです。

僕が色々なものから隔絶された混沌の中に身を置いていようと、しっかり世の中や誰かと繋がりを持っていようと。

そして「ダンス・ダンス・ダンス」Tシャツの表面の左胸ポケットには(下)の方の僕が描かれています。

つまり、戻ってきたほうの僕なのです。

Tシャツには今を生きる僕を描きたかったのでしょう。Tシャツは日常と生身の人に寄り添うものであるから、より現実的でクリアな状態の象徴がふさわしいのでしょうね。

実際赤は「興奮状態」や「勇気を持って行動するさま」を象徴する色、青は「確実さ」「誠実さ」「冷静さ」など現実的なイメージを持つ色なのです。

部屋の様子や時系列とも合致する「僕」のカラーになっているのではないかと思われます。

つまり、(上)の表紙は本の中の「死の部屋」とその時の僕のイメージ。(下)の表紙は全てが完結した後の「死の部屋」(つまり僕の部屋)と僕の繋がりのイメージ。

そしてTシャツの胸がにあるのは後者の僕なのでTシャツというものの現実性を意識したデザインなのではないか、ということが言えるのではないかということです。

これは初めに述べたとおりまったくの私的解釈ですのでその点はご理解願います。

それでは今回はこんなところで。今回もお付き合いいただきありがとうございました。

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