「風立ちぬ」を金曜ロードショーでもう一度観る。繊細で儚い夢と恋。私の非常に好きな映画です。

映画

 「風立ちぬ」。この作品は2013年に公開された宮崎駿作品で、私は当時まだ中学生であったはずです。

戦争作品が好きな父に連れられて劇場で見たはずですが、断片的にしか覚えておりませんでしたが凄く素敵なロマンスであったと記憶していました。

私は今回金曜ロードショーで放送されるということを聞きつけてもう一度観てみることにしました。

 この記事を執筆しますが、私は宮崎駿氏のインタビュー等や他の作品にもあまり詳しくはな炒め、あまり解釈めいたことは言わないようにしようと思います。

あくまで私個人としての、気づいた点、そこから思うこと、というような内容を記事にしようかと考えております。

ラブロマンスとしての「風立ちぬ」。そしてそのラスト。

確かにこの作品の中には「貧乏な国が飛行機を持ちたがる。飛行機を持とうとするから、俺たちは飛行機を作れる。矛盾だ。」というように近代化へのアンチテーゼとしての言葉に聞こえる台詞も含まれていますが、おそらくこれが重要な観点ではないでしょう。

そういうアンチテーゼはきちんと前提として存在しており、その上でこの悲劇のラブロマンスを描きたかったのでしょう。

菜穂子が作業中の二郎の手を握っているシーン。

このシーンで、二郎は「タバコが吸いたいから少しだけ手を離してもいいか」と言います。すると菜穂子は「だめ。ここで吸って」と言います。

このシーン。話を進めるには特に必要なシーンとはいえませんが、非常に重要かつ素敵なシーンだと私は思います。

二人が大事に時間を食い潰すように生きていることを示唆しているのです。そしてこのくらいのことでは問題にしない二人の覚悟、「生」以上の「愛」への執着の現れでもある。

いわば象徴としての非常に重要なタバコに見えるというわけです。

不健康は時としてロマンになるということを改めて教わったような気がします。

そしてラストシーンについてですが、「あなた、生きて」はもともと「あなた、来て」だったそうなのです。

しかしそれでは悲しすぎるという意見を受けて宮崎氏が変更を決めたということなのです。

確かに美しい姿だけを見せにきて山に戻ってしまった強い菜穂子からすると「あなた、来て」というのは少しそぐわないかもしれません。

ですが、私でも「あなた、来て」と言わせると思います。その方が道徳的要素抜きに素敵なラブロマンスが描けるからです。

そして二郎は手を引かれて草原に向かう。菜穂子とともに走っていく途中、振り返るとカプローニは風に吹かれて消えてしまう。そこには宙に舞う葉だけが残されている。そして走り去る二人が遠ざかり、カメラの視点は下から上へ上がり、空を映す。これでエンド。

私ならそうするかもしれません(笑)

しかし最後の最後、「ワインがあるんだ」というカプローニについていく二郎で終わるのもなかなか素敵であると思いますが!

とにかく素敵な作品です。

作品の芸術性

この作品で注目したいのは、舞台は日本。しかもそれぞれのシーンで基本的には同じ建物や施設が映される。

なのに奥行きがあり、そこには芸術性そして情緒も生まれる。

よく観てみるとやはり映し方がすごい。赤いランプの上から人物を描いたり、煙から映したり。素晴らしい作品だと思いました。そういう描き方が、きっとテンポを作り、動きを作り、芸術性を作り上げるのです。

また、芸術性は夢の中のカプローニにもあります。

「夢」というものの美しさと儚さが夜見る方の「夢」の中で描かれるのがあまりに象徴的で、どちらも脆弱で悲しい。切ない。

夢を抱き、夢の途中で歩き続け、そして創造的人生の時間である十年を終えた後。全ての段階においてカプローニが出てきます。

彼はいつも飛行機というものが持つ夢を語ります。そこに対して二郎は夢を抱き、飛行機の呪われた夢について迷い、傷つきながらも創造することに明け暮れた自らを振り返る。

そこに一夏の命を持つ蝉を思う。私もそのようにして夢を追い、そして終わっていくときがくるのだと、どこか感傷的な気持ちになります。

そして最も芸術的であるのは、菜穂子がいなくなったことへの二郎のセリフやシーンがほぼないことです。悲しんだでしょう。しかし追いかけなかったはず。

そこまでがしっかりと予想できることもあり、そしてやはり描かないということでその悲しみを最大限に描いているのだろうということも言えます。

なんとなく宮崎駿氏らしいですね。

そのような芸術的要素が、ラブロマンスと近代へのアンチテーゼの軸に散りばめられているのであると思われるのです。

まとめ

こんなにも純粋で飾り気なく、夢と愛を語るロマンスの儚さと切なさはどうにも私の胸を打ちました。

私が今まで見てきたロマンスの中では一番と言っていいほど抜群であると思います。

私もこのような美しい作品を作りたいと心から思いました。

創作的人生の時間、実に十年。どこからスタートかは分かりませんが、自分がその十年の最中にあると思える時が来たら、その時、持てる力の全てを尽くして何かを書きたい。

それでは今回はこんなんところで。ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

一応下に、今回の記事に関連する記事のリンクを貼っておきます。

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