時間を、運命を、どう捉えるか。映画「メッセージ」を観ました。

映画

 こんにちは。最近は、夜中寝られない時に映画を観るのにハマっていまして、今回は「メッセージ」という映画を観たのでそのお話をしてみようかなと思います。

先にことわっておきますが、この記事はネタバレを含みますのでその点ご理解願います。

この映画はざっくりいうと、地球上の十二ヶ所に謎の宇宙船がやって来て、言語学者であるルイーズが中心となってその宇宙人たちの言語を理解していくという物語となっています。

その中で主人公と死んでしまう娘の回想シーンのようなものも出てきたり、主人公の絶望感がうまく描かれており、すごく繊細な心の問題を取り扱っているようにも思えました。

ジャンルでいうとSFということになりますが、単なるSFではなく、時間や運命の捉え方、そしてそれらとの向き合い方といったセンシティブな心のあり方の方に話がフォーカスされていることもあり、映画としては奥深い作品であると感じました。

今回もユーチューバーである岡田斗司夫氏の解説を観たので、それも交えつつ、その映画のありようから私自身がどう考えたか、そしてラストシーンの芸術としての素晴らしさについて感想を述べていけたらと思います。

1、時間や運命とは何なのか。我々が見えているものとは何か

 この映画を観たら必ず考えさせられるであろうことの一つに、時間、運命それらへの考え方ということが挙げられます。

これについて岡田斗司夫氏の解説を見て、なるほどと思ったことがありました。それは我々が捉えている時間というものはあくまで進行方向が一つであって、しっかりと過去と未来があるということです。

しかしあの宇宙人(ヘプタポッド)はそれより一つ上の次元で生きているというのです。その時間というものに一定の順序はあるにせよ、その時間のおよそ全てをそれはそれとして全体で捉えているというわけです。(だから彼らは空間の中で浮いて存在しており、その字は立体的なのである)

もちろん、時間を全体的に見られているということは運命も受け入れながら生きているというわけです。

映画ではその彼らの運命論を受け入れざるを得なかった、未来の見えるルイーズがどうその問題と対峙していくかというところも描いているのです。

 さてそう考えると我々が見ているこの現実というのは、どこまでいっても時間の流れみたいなものに左右されています。

三十になったらもう結婚できない、とか、就職先がない、とか、八十くらいになったらみんな死んでしまうかあるいは体が動かなくなるんだ、とか……。

そうではなくてヘプタポッド的運命論でいうならばその時間の流れは大して意味を持たず、それはそれとして運命を形成しているのだということです。もう全ては決まっているといっても良い。

しかしすでに決まっているからといって努力をしなくて良い、とかいうことではなく、ただその運命は運命として悲しいことであれ成功であれそこにあるけれど、その結果論は大した意味を持たず、それよりも目の前の今を生きることに今ある神経を全て使っていくべきだ、ということなのではないかと私は思います。

そういう生き方があり、そこに、ある意味では悲しさを覚えることもあるけれど、それゆえに「今を生きる」ということを思い出すべきだ、と伝えているのではないかと思いました。

そのことが回想のような形を用いて巧みに表現されて、素晴らしい作品でした。

私自身も自分の生き方を見直すきっかけになりました。

2、ラストシーンがとにかく素敵

 そんな時間や運命への捉え方を考えると、ラストシーンの芸術性が際立って感じられると思います。

この地球で人間として生を受け、1ベクトルの時間軸を持つ世界の中で「まだ先のわからない未来にどう働きかけるか」という視点で今の行動を選択していくという生き方をとっていたルイーズが、予定調和的な世界観を受け入れざるを得ないその悲しみと順応への諦観の念がしっかりと描かれているというところです。

ルイーズの表情、「もし未来がわかってしまったらどうする?」という言葉、それでも彼と一緒になる選択を取ることで「常に今を生きていく」ということへの決意をすることを伝えているその表現の奥ゆかしさ。

私はこのラストシーンに普通のSFにはない文学的価値のようなものを見出すことができました。

3、おすすめです

 この映画を観たことがない人はぜひ観ていただきたいです。私のこのブログを読んでくださっている方は、私と似たような感性であったり、あるいはそうでなくても文学が好きな方が多いと思います。

この映画はそうした方々に好まれる映画なのではないかと私は思いました。

また、もしすでに観た方がいらっしゃればTwitterのコメント欄などで映画の感想を語り合えたら嬉しいです!

それでは、今回もここまでお付き合いいただきありがとうございました。

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