indigo la End 「夏夜のマジック」に自作ショートストーリーを添えてみた

夏夜のマジックショートストーリー

導入および注意事項

TikTokでも話題沸騰中というこの曲にストーリーをつけてみました!今回はいつも似まして短めです。

 そして、こちらはまったくの私的見解であり、何か公的なものに基づく見解ではありませんので、その点ご理解いただきますようお願いいたします。
 合わせて、この記事では私自身がこの曲に触れて感じたことから物語を綴ったものとなっておりますので、ご自身の中にこの曲への確固たるイメージなどがあり、それに抵触するような見解は見たくないという方はご覧にならないことをお勧めいたします。

 では、ストーリーをお楽しみください( ´ ▽ ` )/

ストーリー

 電車を降りて駆け出す。彼はもう映画館の中にいるはずで、でも本当はいないはずなんだ。私は彼と映画を観る約束をしていて、だからこそ今こうして走っているのだけれど、もう上映時間は迫っている。一日に一本しか上映されない映画で、しかも私は今日のスカートを悩んでいたがためにそれに遅れそうになっている。

 Eの中央の座席。彼の好きな席だ。私はあえて彼がいることを確認せずに席についた。彼が本当は私の隣に座ることなどありえないと知っていたからだ。映画は味気ないラストを迎え、映画館を出た私は夏の夜のなんとも言えぬ清々しさを抱えながら帰路についた。

 彼とは何年も前に別れた。映画を見たあとのささいな喧嘩からだ。

「あの映画のヒロインはさ、どうしてあの場面で彼をふったんだろう。」

 彼はあの日、カフェのテーブルに頬杖をつきながら言った。

「そんなの彼の幸せを願ったからでしょう?」

「そういうの俺わからないんだよね。」

「なんてこというの。」

「だって自分が幸せでなくちゃ意味ないじゃないか。自分が消えてしまったらそれもまた意味がない。自分が消えてしまうということは世界が消えたのと同じことだからね。」

「私との関係いもそんなもんなのかしらね。」

「まあね。嫌なら別れるかい?」

「ええ。」

  全くつまらない別れ方だ。しかし今ならわかる。彼の言っていたこと、考えていたこと。だからあのとき理解できていたらよかったということではなく、そのようなこととは別問題だ。しかし自分がいなくては何があろうともなくなろうとも関係のないことで、だからこそ自分と誰かで自分のことを大事にできたらそれは聞きたることである。そしてまた彼も私に同じようにしたかったのだろう。

夏の夜の花火、空気何もかもが私を見つけては優しく笑った。

恋愛映画。彼は絶対に見ない。見せたとしても別れた時の反応をするだけだ。今の自分ならどういうだろうか。夏夜に弾けた光と湿気が私の息を吸い込んで、また熱に変えていく。

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