導入および注意事項
あいみょんの楽曲の中だと珍しい、真正のバラードですね!
そして、こちらはまったくの私的見解であり、何か公的なものに基づく見解ではありませんので、その点ご理解いただきますようお願いいたします。
合わせて、この記事では私自身がこの曲に触れて感じたことから物語を綴ったものとなっておりますので、ご自身の中にこの曲への確固たるイメージなどがあり、それに抵触するような見解は見たくないという方はご覧にならないことをお勧めいたします。
ではストーリーをお楽しみください( ´ ▽ ` )/
ストーリー
大学を中退しながらも、誰の記憶の中にも存在し、自らの心や思考を広めた夏目漱石という作家は私の憧れだ。いや、もうすでに憧れを語る時点で私という個性は死んでいるのかもしれない。そうだ、そんな気もする。
私は大学卒業まで順当に乗り越えた。何の問題もなかった。しかし秀でた所もこれはこれでなかった。まず秀でた人間というのは、普通我慢してしまうものを我慢できない人間のことなのだろう。自分という軸から外れたところにあるものは許せないから、悲しんだり遺憾の念を覚えたりして自分の中の才能のようなものを開花させ、また育てていくのであろう。
自分はというと多くのものごとをよしとしてきてしまったし、我慢もできた。しかし、成し遂げたかった夢はあった。しかしそれには面倒なことが多く存在した。その上リスクもあった。その犠牲を払ってまで私というものを貫くことに、あまり価値を感じなかったのだ。
「本日のゲストはこちらの方です!どうぞ!」
「はーい、こんにちは~」
「昨年は主演映画にも出演されていましたね~、僕も観にいかせてもらいましたよ!」
「本当ですか、ありがとうございます!」
テレビに因縁の女優が写っている。私が五年前受けた女優オーディションで出会った子だ。出来レースだった。有名人の娘だったのだ。もっときれいな人もいたけれどみんな落ちた。そんなものだ。そのような闇を見てから、私は恐ろしくなった。この世界に行くことも社会生活を送ることも恐ろしくなったのだ。でもやはり役者自体には憧れていた。その後三回ほど舞台女優のオーディションを受けたがこれも惨敗。コネクションが存在していない場面でも私には才能がないということを悟り、私は何もかも諦めた。そう、文字通り諦めたのだ。
「あ、あの映画に出ていた女優さんだ。この人より君の方がきれいだけどね
。」
同棲している彼がそう言って笑いながら私の横に座った。
「ありがとう。」
この画面の中にいる因縁の女優は彼には出会っていないわけだ。何だか凄い風の吹き回しだ。昨日まで、この人と寝て、仕事に行ってただそれだけの日常が疎ましかった。夢がない自分は何とも孤独で眇眇たるものだなんて感じていた。確かに彼と家で鉢合わせることも少ないので、そう感じるということも、無理はないのであるが、それにしても私はあまりにも自分の今を悲観していたようだ。
手に入るものもあれば、その道中捨ててしまうものもある。何が本当に自分の人生に求められているなんて、わからないからすべて失ったような気になってしまう日もあるけれどそんなことばかりでもないのかもしれない。それにまた新しい夢やそれに向かう強固な心が私の持つところとなるのかもしれない。
「いつもは何言ってんのって苦笑いするのに、今日はどうしたの?」
「別に何もないよ。」
日常も大切に。でも何か突然来るかもしれない転機を今度こそ受け止め切れるように、私が私として成熟しなければならない。私は彼にキスをする。カーテンの閉まった、人工的な明るさを保つ部屋の中で。
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