秋になった。風邪をひいた。

雑記

無茶苦茶で破天荒な魔法使いみたいな夏がどこかへ行って、したたかで聡明な秋がちゃんと時間に間に合うようにやってきた。近頃はそんな感じがします。

いきなり風の匂いが変わって、光の色が変わって、ぱっと目に見えるものの解像度が上がったような気がしました。秋がやってきたんだ、と思ったら、夏に狂わされた過去の私を感じて妙な孤独感を感じました。

そんな季節の変わり目に、風邪をひきました。

ちゃんと喉が痛くなって熱が出て、咳がコホコホと出て。とてもしっかりと形式ばった風邪です。それでいてその工程の移り変わりは流れ作業のように淡白で素早く、そんなところに少し自然の目的論的なところを見たような気がして嫌な気持ちになりました。

それと同時に、「私」の状況が今、大きく大きく変化しようとしているのだということにふと気づきました。変わっていくものが出てきた時、強制的なリセットが持ち込まれて人生の時間が進むことは私の人生においてよくあります。私が何もうまく捨てられないから、私を守る何かがわざとそうさせているような気さえする。

風邪はとってもつらいのだけれど、なんでかとても晴れやかな気持ちなのです。

この夏も秋も、少し強引な感じがして。そうそれこそ、『風の歌を聴け』『1973年のピンボール』の鼠みたいな気持ちです。

それらの間で風邪をひいて、少し渋谷の喧騒を離れて、家にいて私自身と話をするように気持ちをたしかめて。

もう諦めるべきことや、捨てるべきもの、今まで手にしていたようで本当はどこにもなかったもののこと、そんなことをゆっくり考えて。気づいたら少し熱はひいていました。まだ風邪の匂いと気配を体全体に感じるけれど、何かが大きく崩れて、別のものが持ち上がってくるのを感じます。

ゆっくり歩け、たくさん水を飲め。

ピンボールのあの言葉は、正しい。

ちゃんと覚えておけるように、でも止まってしまって眺めすぎたりしないように、歩みは止めずでもゆっくりと。生活をして、水を飲んで、私を保つ。

途方もないな。長いな、つらいな。夢があってよかったな。

いろんなことがあると思うけれど、とりあえず水を飲もう。

とりあえず、水。

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