あいみょん「from四階の角部屋」に自作ショートストーリーを添えてみた

『from四階の角部屋』イメージ画像ショートストーリー

導入および注意事項

 少し陰気な感じが読み取れるこの曲。俗っぽい言葉を使いながらも、その奥深さが物語られたこちらの楽曲に今回はストーリーをつけてみました。

 そして、こちらはまったくの私的見解であり、何か公的なものに基づく見解ではありませんので、その点ご理解いただきますようお願いいたします。
 合わせて、この記事では私自身がこの曲に触れて感じたことから物語を綴ったものとなっておりますので、ご自身の中にこの曲への確固たるイメージなどがあり、それに抵触するような見解は見たくないという方はご覧にならないことをお勧めいたします。

 では、ストーリーをお楽しみください( ´ ▽ ` )/

ストーリー

 ため息が涙を生んで涙がため息を生む。そうして一日一日が過ぎてしまって結局私はこのアパートといおうか、小型のマンションといおうか、微妙な建物の四階、その角部屋に戻ることになるのである。僕には、セックスフレンドのような男の子がいる。そして私は彼のことが一方的に好きだ。向こうもこの状態を意図していたかは分からないけれど、流れというものでそうなったのだ。「流れ」なんてものが本当に人の関係に作用するのか、それまでは疑っていたのだが、本当にそんなことがあるとは自分でも驚きである。

 彼は高校の時の先輩だった。私は当時から彼に憧れを抱いており、彼の卒業間近に告白したが当然駄目であった。そしてそれから二年後、彼は突然私に連絡をしてきた。

「ご飯でも行かない?俺さ、最近バイトたくさん入れているから飯なんて何回でも奢れるよ。あの時のことも謝りたいしね。嘘をついていたんだ。

 私は何故か彼と会う決意をした。駅のベンチで私を待つ彼は昔の通り美しかった。しかし、あの時のような目立った整いではない。ひそやかで、埋もれてしまいそうでもある、そういう類の美しさだ。

「先輩、お久しぶりです。」

「お、久しぶり。行こうか。」

 そういうと彼は私の手をとった。不覚にも私の胸は高まった。灰色の夜に紛れ込みそうな二人は繁華街へ。誰の目にも止まらぬスピードで流れる私の中の時間が、まるで止まることを知らない。

「ねえ君はさ、愛だけで人と人が永劫の時をともにできるという仮説があったとしたら、それを信じる?」

 彼は私の手を握って一歩前を歩いた。白い、いかにもハイテクなライトに照らさせた左半身が右半身をうまく隠してしまっている。右側の彼は闇に吸い込まれてしまいそうだった。

「そうだったらいいなって思います。」

「うん、俺もそうだったらいいなって思う。でもねどうしてもこの仮説は信用できないんだ。だって僕は生き物だからさ。」

「……。」

「ほら、あのレストランね。」

 この後我々は食事をして、同じ道を歩いた。その時彼は言った。

「初めと同じ質問をしたい。愛だけで人と人が永劫の時をともにできるという仮説があったとしたら、それを信じる?」

「信じたいです。」

「ということは君はさ、この仮説は覆されるかもしれないとどこかで思っているということだよね。」

 先輩はとにかく変わった。文学部とは怖い場所だ。ここまで、人を変えてしまう。しかし今の彼は繊細で好きだ。

「そういうことになってしまいます。」

「だったら、もう覆しちゃおうよ。なにか新たに生まれるかもしれない。君の生き方の基盤だとか、異性に対する見方だとか、そういうものが。」

「具体的には?」

「一度、君を抱きたい。僕のためにも君のためにも。」

 今思えばなんという誘い文句なんだと訝しむが、不思議な魔法のようなものがかかって、私は彼に抱かれた。実に大人しく。おかげで私の中に理想論のようなものは消えた。抱かれたって極論ただ虚しいだけだ。回数を重ねて思ったことは、彼の誘い文句にはきちんと注意書きが添えてあった。私を愛することはできないし、愛したところで君に依存することはないと。いつか離れる時が来る。そういうことだ。

 それを実感する明け方に私は決まって苦しくなって、四階の角部屋についた時私はついに生ゴミになる。

 苦しく、熱く、優しい夜が来る。私はまた待つ。この部屋で。

コメント

タイトルとURLをコピーしました